未払費用とは一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対して、いまだ対価の支払が終わらないものを言います。
代表的な未払費用として、固定資産税、社会保険料、従業員給与、地代家賃、借入金利息などがあります。この他に運賃、広告宣伝費など諸経費で未払になっているものは、未払費用として計上することで節税ができます。
●支払義務の確定 ・・・ その費用について決算期末までに支払義務が確定していること
●原因事実の発生 ・・・ 決算期末までにその債務に基づいて具体的な給付原因となる事実が発生していること
●金額が明らか ・・・ 合理的に金額の見積りができること
法人税法上、固定資産税の損金算入時期は、次のいずれかを選択することができます。
① 実際に納付した日の事業年度
② 納期の開始日の事業年度
③ 賦課決定のあった事業年度
一般的に、①で処理している法人が多いのではないでしょうか。
③の方法によれば、賦課決定があった年度に、その年度の固定資産税の全額を未払費用として計上することで損金算入することができます。(法基通9-5-1(2))
賦課課税方式の租税公課の損金算入時期は賦課決定のあった日の属する事業年度になります。
社会保険(健康保険料、厚生年金保険料)、労働保険(労災保険、雇用保険)は、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金に算入することができます。
ただし、賞与にかかる社会保険料は支払った時でないと確定しないこととされていますので、未払金とした賞与にかかる事業主負担分は費用とすることはできません。
種類 | 保険の内容 | 支払時期 |
---|---|---|
社会保険 | 健康保険、厚生年金 | 毎月 |
労働保険 | 労災保険、雇用保険 |
5月、8月、11月 |
会社の社会保険は(健康保険料、厚生年金保険料)当月分を従業員の給料から天引して預り、翌月月末に会社負担分と合わせて支払う仕組みになっています。
保険料の計算の対象になった月の月末に支払義務が確定するので、未払費用として計上することが可能です。
また、労働保険料の取扱いは次のようになります。
労働保険の保険料は保険年度首(4/1~5/20)に前年度の実績に基づいて概算保険料を申告納付し、保険年度経過後に確定保険料を算定して過不足を清算する仕組みになっています。4月決算の法人が4月中に保険料申告書を提出または、納付したときは損金に算入することが認められます(基通9-3-3)。概算保険料支払時の被保険者負担分は立替金などで処理して置き、保険料確定後に精算することになります。また、この立替金は貸倒引当金の設定の対象になります(基通11-2-16(2))。
毎期継続適用を行った場合、最初の事業年度にのみ効果があります。
従業員の給与計算期間を当月16日~翌月15日とし、支払日を20日や25日にしているところが多いと思います。この場合、給与計算期間翌日の16日から31日までの給与を未払費用として計上することができます。
3月決算法人の事例 給与計算期間 当月16日~翌月15日
●計算期間 2/16 ~3/15 支払日3/25 支払金額 500万円
●計算期間 3/16 ~ 3/31 支払日4/25 250万円(未払費用)
① 役員報酬はこのような未払分としての費用とすることはできません。
② 賞与を未払費用として計上するには次の要件を満たすことが必要です。
【賞与未払計上要件】
● 賞与支給総額を従業員別に確定し、その金額を知らせていること。
● 実際の支給は、決算日の翌日から1ヶ月以内であること。
● 支給額について損金処理していること。
賞与支給額が確定したことを証明する資料を整えておくことが必要です。
① 給与支給支払明細書
② 支給したことを証明する従業員の確認書(日付も自署してもらう)を整備しておく。
1年以内の短期前払費用について、厳密な期間対応による繰延経理をせずに、その支払った額を継続して損金に算入しているときは、これが認められています(基通2-2-14)。
前払費用とは一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、当該事業年度終了の時において、いまだ提供されていない役務に対応するものをいいます。
① 一定の契約に従って、継続的にその期間中に役務の提供を受けるものであること
② 翌期以降において時の経過に応じて費用化されるものであること
③ 現実にその対価を支払っていること
具体的には、支払家賃、支払利息、支払保険料等が上げられます。
上記の法人税基本通達中の「支払った場合」には、支払手段としての手形の振り出しが含まれると解されています。
例えば 期末に手形で翌期の1年分の家賃を支払っても、全額損金経理ができることになります。
ただし、もっぱら租税回避目的で不用不急の前払いを行い、この通達を悪用するようなものについては、本通達の適用が不適当とされることも有り得ると考えられますので、この方法が全ての場合に認められるとは限りませんので、注意してください。
① 契約内容に従った前払いである必要があります。
月払契約の家賃を決算月に1年分前払しても、認められません(年払契約への変更が必要)。
② 1年を超える期間の費用を支出した場合、支出した年度に経費処理できないのは1年を超える期間の部分ではなく、翌期以降に対応する部分すべてとなります。
③ 収益と対応させる必要のある費用は対象外となります。例えば、借入金を預金で運用している場合の預金利息と借入利息、借り上げ社宅の受取家賃と支払家賃など
④ 等質・等量のサービスという要件もポイント。サービス内容を吟味して適用可否を検討する必要があります。
⑤ 継続して毎期、この処理方法によること。
事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これに準ずる棚卸資産(各業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認めるとあります(法人税基本通達2-2-15)。
【取得時に損金処理できる消耗品の処理要件】
① 事務用消耗品、作業消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品、その他これに準ずる棚卸資産であること
② 各事業年度ごとにおおむね一定量を取得し、経常的に消費するものであること
③ 継続して取得した事業年度で損金の額に算入していること
なお、本通達には、「支払った」という文言は入っていないので、期末に未払いであっても損金経理は認められます。
ただし、これらの事務用消耗品等の棚卸資産であっても、相対的に多額で、毎年度末の在庫計上に相当の増減がある場合等、所得計算上ゆがみが生じ、課税上弊害があると認められる場合には、本通達の適用はなくなります。
商品の評価損を法人税では原則として認めていませんが、例外的に次のような状況の場合は評価損が認められます。
また損金経理により帳簿価額を減額することが必要です。
【形式的基準】
① 商品が破損、型崩れ、店晒し、品質変化や災害によってひどく傷ついた場合
② 商品そのものに傷はないが、流行品の売れ残りで見切り販売しなければならないことが、今までの販売実績で明らかな場合
③ 同様な商品がモデルチェンジした(性能品質が向上した新製品)ことで、今後、普通の方法で売ることができなくなった場合
④ バーゲンなどの安売り、値引きでもしなければ売れないような商品が該当します。
評価損に該当する状況 | 疎明資料の作成 |
---|---|
著しく陳腐化した場合 | 過去の実績に照らして、価格低下が著しいことを証明するため、商品ごとの仕入価格、通常の販売価格、特売見込み額、評価減について、過去3年分程度の実績表等を作成し、それに準拠したことを提示することが必要。 |
商品が破損、型崩れ、店晒し、品質変化や災害によってひどく傷ついた場合 | 品質劣化を証明するため、劣化の状況を写真で残し保存するとともに、商品ごとの仕入価格、通常の販売価格、特売見込み額、棚ざらしなどの理由、評価減についての実績表等を作成しそれに準拠したことを提示することが必要。 |
法人が所有する有価証券について、次のような場合には、原則として、帳簿価額と時価との差額など一定の金額を限度として評価損の計上が認められます。
なお、この評価損を計上した場合は、時価法による評価損益と異なり、翌事業年度でのいわゆる洗替計算は必要ありません。
法人の所有する有価証券について次の事実が生じた場合で、その法人がその有価証券の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したとき
① 取引所売買有価証券、店頭売買有価証券、取扱有価証券及びその他価格公表有価証券(いずれも企業支配株式に該当するものを除きます。)について、その価額が著しく低下したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなったこと。
② 上記①以外の有価証券について、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなったこと。
③ 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定があったことによりこれらの法律の規定に従ってその有価証券について評価換えをする必要が生じたこと。
④ 上記②又は③までに準ずる特別の事実
有価証券を所有する法人について次の事実が生じた場合で、その法人が売買目的有価証券及び償還有価証券以外の一定の有価証券の価額について民事再生法の規定による再生計画認可の決定があった時の価額により行う評定などの評定を行っているとき(確定申告書に評価損明細の記載があり、かつ、評価損関係書類の添付がある場合に限ります。)
① 民事再生法の規定による再生計画認可の決定があったこと。
② 上記①に準ずる事実(法法33、法令68、68の2)
(1)上場有価証券(20%以上有する企業支配株式を除く)
事業年度終了時の取引所の相場価格が、買った時(帳簿価格)の価格の50%未満となっていて、近い将来に株価の回復が見込まれないときには、その差額を有価証券評価損として費用にできることになっています。
注意しなければならないのは、価格の50%未満は相場で把握できますが、株価の回復見込みについては判断ができないところです。税務当局とも意見の相違となる事項でもあります。
最低限、有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化しているかを決算書を取り寄せるなどして事前に検討しておくことが必要かと思われます。
(2)非上場有価証券
発行法人の資産状態が著しく悪化したため、その価格が著しく低下して、取得時の価格を下回ることになった場合に、評価損を計上でます。
「資産が著しく悪化」とは、発行法人が破産手続き、民事再生の決定の適用を受けた場合があげられます。
貸倒引当金は、将来発生すると見込まれる売掛金や受取手形、貸付金などの貸倒を見込んで一定金額を事前に引当金として費用にできるというものです。
この貸倒引当金の計算方法には2つの方法があり、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区分されます。
債務者の状態 | 繰入限度額 |
---|---|
会社更生法等の更生計画認可決定等 | (対象金銭債権)-(特定の事由が生じた事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までの弁済予定額―(担保権の実行などにより取立てが見込まれる額) |
債務者の債務超過等 | (対象金銭債権)-(担保権の実行などにより取立てが見込まれる額) |
会社更生法の更生手続開始申立 | {(対象金銭債権)-(債務者から受入れた金額があるため実質的に債権と見られない額)―(担保権の実行などにより取立てが見込まれる額)}×50% |
一括評価金銭債権の範囲は次のようになります。
① 売掛金、貸付金
② 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等又は貸付金の未収利子で益金の額に算入されたもの
③ 他人のために立替払をした場合の立替金
④ 未収の損害賠償金で益金の額に算入されたもの
⑤ 保証債務を履行した場合の求償権
⑥ 売掛金、貸付金などの債権について取得した受取手形
⑦ 売掛金、貸付金などの債権について取得した先日付小切手のうち法人が一括評価金銭債権に含めたもの
⑧ 延払基準を適用している場合の割賦未収金等
また、次のような金銭債権は一括評価金銭債権には当たりません。
① 預貯金及びその未収利子、公社債の未収利子、未収配当その他これらに類する債権
② 保証金、敷金、預け金その他これらに類する債権
③ 手付金、前渡金等のように資産の取得の代価又は費用の支出に充てられるものとして支出した金額
④ 前払給料、概算払旅費、前渡交際費等のように将来精算される費用の前払として、一時的に仮払金、立替金等として経理されている金額
⑤ 証券会社又は証券金融会社に対し、借株の担保として差し入れた信用取引に係る株式の売却代金に相当する金額
⑥ 雇用保険法、雇用対策法、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定に基づき交付を受ける給付金等の未収金
⑦ 仕入割戻しの未収金
⑧ 保険会社における代理店貸勘定の金額
⑨ 法人税法61条の5第1項(デリバティブ取引に係る利益相当額の益金算入等)に規定する未決済デリバティブ取引に係る差金勘定等の金額
⑩ 法人がいわゆる特定目的会社(SPC)を用いて売掛債権等の証券化を行った場合において、その特定目的会社の発行する証券等のうちその法人が保有することとなったもの
⑪ 工事進行基準を適用している場合の当該工事の目的物を引き渡す前の工事未収金
繰入限度額=期末における一括評価金銭債権の帳簿価格の合計額×貸倒実績率
期末資本金1億円以下の中小企業等については、一括評価金銭債権の実績繰入率に代えて、法定繰入率を選択適用することができます。
この特例を適用する場合はその債権の債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額に相当する金額を一括評価金銭債権の金額から控除します。
繰入限度額= (期末における一括評価金銭債権の帳簿価格の合計額)―(実質的に債権と見られない金額)×法定繰入率
中小法人等の法定繰入率は、次のようになっています。
●卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む) ・・・1000分の10
●製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業及び修理業を含む) ・・・1000分の8
●金融及び保険業 ・・・1000分の3
●割賦販売小売業及び割賦購入あっせん業 ・・・1000分の13
●その他の事業 ・・・1000分の6
中小企業は業種別に定められた繰入率で貸倒引当金を費用にできます。
この貸倒引当金は、100%子会社の対するものでも債権として計算できますから、例えば、販売子会社を設立し、棚卸資産の販売を行っている場合でも、親会社では、子会社への売掛金に対して貸倒引当金を費用化し、子会社では得意先への売掛金に対し貸倒引当金を費用化すれば、ダブルで費用とすることができます。
せっかく売り上げたのに、得意先から代金を回収できないいわゆる不良債権を抱えていても何にもなりません。
回収努力をして少しでも回収できればよいのですが、それができない場合は早期に貸倒損失として費用にして節税します。
税法では、どの時期に貸し倒れとすることができるかの要件を具体的に定めています。
● 債務者との取引停止後1年以上経過したことにより貸倒損失が認められるのは、その債務者と継続的取引があった場合の売掛債権に限られます。
たまたま行った不動産の売却に係る債権について貸倒損失を計上することはできません。
● 連帯保証人となっていため債権者から債務の履行を求められた場合には、その保証債務を履行した後でなければ貸倒損失は認められません。
ゴルフ会員権は、以前は値上がりも期待できましたが今は値下がりするだけで、時には「破産しました。」との通知がくることもあります。
通知が届くとその決定がされるまでは損失を費用にできませんので、投資が目的のゴルフ会員権であれば売却して損失を出してしまうことです。
得意先との接待が主目的でなければ思い切って売ってしまうことをお薦めします。
今は、会員でなくても安い料金でプレーが楽しめますから、ゴルフ会員権を持っていてもメリットが少ないと思われます。
社長個人で法人から取得すれば、法人では節税ができ個人は資産として残せますし対外的にも影響を与えることはあまりないと思われます。
但し、税務上はその売買価格が適正(時価)かに注目しますので、売買価格の算定根拠となる第三者からの資料を整えておくべきです。
ゴルフ場経営会社につき民事再生法の規定による再生計画の認可の決定が行われ、預託金の一部が切り捨てられる場合、そのゴルフ場の会員権を有する法人は、法律的に債権の一部が消滅した場合には、その切り捨てられた部分の金額については、原則として、切捨ての事実が生じた事業年度において貸倒損失として損金の額に算入されます。
ただし、会員がゴルフ会員権を預託金の額面金額以下で取得している場合は、貸倒損失に計上できる金額は、帳簿価額と切捨て後の預託金の金額との差額を限度とします。
金銭債権の一部が更生計画の認可決定や再生計画の認可決定によって切り捨てられた場合には、切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度において貸倒損失として損金算入されます(法人税基本通達9-6-1(1))。
ゴルフ会員権は、会員契約の解除がなければ預託金返還請求権(金銭債権)に転換しません。
再生手続は経営の継続が前提となっているので、通常、会員契約は解除されることはないため、認可決定により預託金の一部が切り捨てられたとしても、金銭債権の性格を有しないゴルフ会員権について貸倒損失を計上することは認められないとも考えられます。
会社を設立する際に、会社設立や事業開始のための準備費用が必要になりますが、この経費は創立費・開業費として繰延資産として計上されます。
損金の額に算入される金額は、償却費として損金経理した金額のうち繰入限度額に達するまでの金額です。
したがって会社が費用に計上しなければ法人税法上損金とはなりません。
任意に償却できますので赤字の初年度は繰り延べて、黒字の年度で償却するなどとして納税額を調整することが可能です。
【創業費と開業費】
創業費 | 開業費 |
---|---|
定款及び諸規定の作成認証費用 創立事務所の賃貸料 設立使用人の給与設立登記費用 株式募集その他のための広告費 株式申込証・株券等の印刷費 金融機関の取扱手数料 証券会社の取引手数料 |
開業準備のために特別に支出した 広告宣伝費 教育費 接待費 旅費 調査費等 |
※ 支払利子、使用人給与、家賃、水道光熱費等のような経常的費用は、開業費に含まれません。
資本金が1億円を超えた法人が支出した交際費は費用になりません。また資本金が1億円以下の法人の場合は、限度額(最高400万円以下の)を超えた支出分は費用になりません。周辺科目との区分を明確にすることで交際費の額の減少が可能となります。
【会議費等との区分】
平成18年4月1日以後に開始する事業年度から「一人あたりの金額が5,000円以下の飲食費用は交際費の範囲から除かれる」ことになりました。
社外の者に対する接待であること、これらの事実がわかる証拠書類をきちんと作成・保存することが重要となります。
証拠書類の記載内容
① その飲食のあった年月日
② その飲食に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
③ その飲食に参加した者の数
④ 費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
⑤ その他参考となるべき事項
広告宣伝費は商品等の販売を促進するために支出する費用で、不特定多数に対する宣伝効果を意図しているものです。
たとえば、カレンダー、タオル、手帳、扇子、うちわなどは広告宣伝費でとして全額経費処理できます。
また、販売業者が商品の販売促進のために金品引換付販売に伴い一般消費者に金品を交付するために必要な費用も広告宣伝費となります。
尚、この場合 一般消費者(不特定多数)を対象とした場合、金品の額におけるおおむね3,000円以下という制限はありません。
販売促進のために製造業者や卸メーカーが販売業者に景品として交付する金品は、一般消費者に該当しないためその支出は交際費に該当します。
しかし、販売促進のための景品は、その単価がおおむね3,000円以下で、その種類および金額が相手方に確認できるものもが、広告宣伝費として処理できます。
このため景品のとして、ビール券、図書券、テレフォンカード、オレンジカード、ゴルフボールなどが有効です。
ただし、たとえ単価が3,000円以下であったとしても、商品券、旅行券、観劇券は交際費となりますので注意が必要です。
【一般消費者に該当しない取引関係例】
① 医薬品の製造者又は販売業者と医師又は病院診療所の関係
② 建築資材の製造業者又は販売業者と大工、左官等の建築業者の関係
③ 肥料、飼料等の農業用資材の製造業者又は販売業者と農家の関係
広告宣伝のためや販売促進費とする留意点は、次の項目になります。
① 不特定多数の人を対象とする(一般消費者)
② 自社名、自社商品名入りのカレンダー、ティッシュ、うちわ、タオル
③ 一般の人に対し、抽選による旅行、金品などの提供
④ 一般の人に対し、製品の試食・試飲させる費用及び景品の提供費用
⑤ モニター協力への謝礼
⑥ 得意先に対する見本、試供品
⑦ 新製品等の展示会に得意先を招待するための交通費、食事代、宿泊費
⑧ 自社工場などを見学者させるための交通費、食事代、宿泊費
契約が社外の者からの情報提供や紹介・斡旋などによって成立する場合、これらの業者に支払った情報提供料などは問題なく損金となります。
ただし、情報提供等を業務としていない一般の個人に支払ったものは交際費となります。これは一般の個人に対するこれらの費用の支出は対価としての性格が乏しく、謝礼金としての性格が強いためです。
情報の提供を業としない者に対して支払う情報提供料(取引業者の従業員個人に対するものを除く)が情報提供料として経費処理するためには、あらかじめ広告、ビラなどで提供される情報とその対価が明らかにされていることにより、金額の算定根拠が広く周知されている必要があります。
情報提供料の支払は、交際費とならないように覚書等を作成して、計算の根拠を明らかにしておくことが大切です。
なお、領収書は必ず申し受けることを徹底し、住所、氏名、電話番号を控えておく必要があります。
次の要件のすべてを満たし、その金品の交付が正当な対価の支払である場合は、その交付に要した費用は、交際費に該当しません。
① あらかじめ締結された契約に基づいて支払われるものであること
② 契約により提供を受ける内容が具体的に明らかにされていて、これに基づいて実際に提供を受けていること(証憑などで明らかにし、保存すること)
③ 支払われた金額がその提供を受けた内容に照らして相当と認められること
最近では、社内旅行も国内だけでなく、海外に出かけることが少なくありません。
社員旅行の費用は、その旅行の目的、従業員の参加状況、旅行費用負担額などを総合的に勘案して、福利厚生費、給与、交際費などに処理されますが、次の2つの条件を満たしていれば、福利厚生費として処理できます。
① 旅行に要する期間が4泊5日以内であること
(海外旅行の場合には目的地での滞在日数が4泊5日ということで、飛行機内等での1泊は加算されない)
② 旅行に参加する従業員等の数が50%以上であること
(工場や支店別の旅行ではその工場や支店の従業員の50%以上)
社員旅行の費用については、明確な金額の規定はありませんが、一人当たりの費用が10万円を超えると給与として扱われる可能性があります。
また、社員旅行の不参加者に旅行費用の代わりとして現金を支給した場合、不参加者はもちろん旅行に参加した社員も、その現金に相当する給与が支払われたものとして、所得税がかかります。
ただし、保安要員などで会社の業務のために参加できなかった者にだけ現金を支給した場合は、現金の支給を受けた者にだけは給与として所得税がかかることになります。
社員旅行であっても次の事項に該当した場合は、交際費又は参加者への給与として取り扱われます。
【社内旅行費用が給与とみなされるケース】
● 期間が4泊5日を超えるとき
● 従業員の参加割合が50%未満のとき
● 自己都合によって不参加をなった者に金銭を支給するとき
● 旅行費用が高額なとき
【社内旅行費用が交際費とみなされるケース】
● 豪華なホテルでの宿泊
● 高級レストランでの食事
● 常識を超えた遊興
会社は、社員の福利厚生のために、会社名義でレジャークラブに加入したり、別荘を購入して社員に安い料金で使用させることもあります。
レジャークラブの入会金や年会費の税務上の取扱いは、誰の名義で入会して誰が利用しているかによって、給与あるいは交際費または福利厚生費として処理します。
【法人で購入するクラブ等の例】
① ゴルフクラブ(得意先接待及び福利厚生目的)
② スポーツクラブ(職員健康増進目的)
③ レジャー施設及び宿泊設備(福利厚生目的)
④ 別荘の購入(得意先接待及び福利厚生目的)
レジャークラブ等の入会金及び会費の経理処理は、入会金及び会費についてその使用目的により経理処理します。
① 特定の役員や従業員だけが利用する場合は、入会金も年会費も給与となります。
② 得意先が利用する場合、入会金は資産計上し、年会費は交際費となります。
③ 従業員が利用する場合、入会金は資産計上し、年会費は福利厚生費となります。
尚、会社がお金を出して個人会員として入会しているレジャークラブは、法人会員制がないため個人会員となった場合を除いて、入会金も年会費もその個人の給与となります。
レジャークラブ等の会費を会社が負担した場合に費用とし、社員が受ける経済的な利益は給与として課税されないための留意点は次の通りです。
【レジャークラブ費用が福利厚生費となるケース】
① 社員が安い利用料で使用できる経済的な利益の額が著しく多額でないこと
② 特定の役員又は使用人だけを対象としないこと
③ クラブ等の利用規定を作成する。
④ 全職員が利用できることを周知徹底する。
⑤ 施設の料状況を把握する。(役員、特定の職員の利用目的でない事の証明)
会社では、10年以上長期にわたり勤務してきた永年勤続者を表彰し、記念品を贈呈したり、旅行に招待したりして、その労をねぎらうことがあります。
社内の規定に基づき、旅行に招待したり、記念品を贈呈するための費用は、福利厚生費として処理します。
しかし、職員が自由に使うことができるために同額の現金や商品券、旅行クーポンを渡した場合は職員の給与となります。
永年勤続表彰の記念品や招待旅行や創立記念の記念品が福利厚生費として処理されるためには次の条件を満たす必要があります。
【永年勤続表彰の場合】
① 記念品や招待旅行の金額が、贈られた者の勤続年数等に照らして社会通念上妥当であると認められること
② 表彰の対象が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ2回以上の表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行なわれるものであること
【創業記念品の場合】
① 社会通念上、記念品としてふさわしいもの
② 記念品の価額(処分見込価格)が1万円以下であること
③ 一定期間ごとに行われるものについては、相当の期間(おおむね5年ごと)の間隔で行われるもの
会社が従業員へ昼食として食事を支給した場合、それが経常的であるものは、職員への経済的利益として現物給与扱いになります。しかし、会社の負担額が月額3,500円以下で、かつ、従業員が食事代の50%以上を負担していれば福利厚生費として処理することができます。(所基通36-38の2)
食事代の評価は、次の金額で評価することになっています。
① 会社が調理して支給する食事については、その食事の材料費に相当する金額
② 会社が購入して支給する食事については、その食事の購入価格に相当する金額
ただし、食事代を現金で渡した場合は、給与になります。食事は現物で支給することが節税なります。
会社が食事を職員に提供し、その支出を福利厚生費として処理するための留意点は次の通りです。
【従業員食事代が福利厚生費となるケース】
① 会社の負担額が月額3,500円以下であること
② 従業員が食事代の50%以上を負担すること
③ 現物支給であること
残業した人や宿日直した人への食事代は、原則として福利厚生費とすることができます。
また、残業時の食事は、会社負担の金額制限及び職員の負担義務がありません。(基通36-24)
ただし、残業時や宿日直の食事代についても現金で支給すると給与とみなされます。
【残業時の食事代】
① 会社負担の金額制限なし
② 従業員負担の制限なし
③ 食事代を現金で支給しない
新年会・忘年会・暑気払いなど企業が社員に向けて行うレクリエーションは、社会通念上の内容及び支出であればその費用の全額を福利厚生費として損金にすることができます。
福利厚生費として処理するための条件として次の3つを満たす必要があります。
① 全従業員を対象としていること(やむを得ない事情で参加できない者は除きます。)
② 会社の費用負担が一律であること(会社の規模によっては、部署ごとに行う場合など。)
③ 会社が負担する費用は、社会通念上の金額であること。
忘年会、新年会の場合、二次会・三次会と開催することがありますが、二次会・三次会の費用を福利厚生費として処理するには注意が必要です。
一般的に二次会以降の参加者は、全員参加よりも有志という形が多く、支出金額が高額になるケースが多いため、福利厚生費として処理するより交際費として処理すべきです。
ただし、二次会が当初より計画されており、ほぼ全員が参加する前提とし、かつ、それを証明する証拠資料があるのであれば福利厚生費としてもかまいません。
① ほぼ全員が参加することが事前に決まっている
② 会の費用が高額にならないこと
③ 一次会同様当初より二次会が企画されていること
たとえば、リクリエーション委員会を設け、一次会、二次会を職員が企画し、二次会に全員参加のボーリング大会やカラオケ大会を実施する場合は、福利厚生費処理も可能です。
従業員が資格や免許を取得して会社に貢献してもらえれば、業績の向上が見込めますから、積極的に奨励したいものです。
運転免許のように、その人が会社を離れても使用できるものの場合は、その資格取得費用を会社が負担すると、その従業員への給与となります。
例えば、語学を習得する費用など一般的な資格にかかるものは給与となりますので注意が必要です。
しかし、その資格が職務に直接必要なもので、一般的なものや特定の従業員を対象とするもの以外の場合に限り、例外的に会社負担分を非課税給与として取り扱うことが認められています。
【給与とされないための要件】
① 会社の業務遂行上、どうしても必要な技術、知識、免許、資格を習得させるためのものであること
② その社員の職務上、直接必要な資格、知識、免許、資格であること
③ その費用として適正な金額であること
旅費について、実費精算をして日当を支給していない会社があります。しかし、出張旅費は、出張先・出張目的・出張者の地位・出張期間により、金額が変動します。このため出張者が出張より戻るまで支出金額は仮払金処理され、事務処理が煩雑になります。
旅費規程を定めその規定基づき旅費・日当を支払うことにより、事務手続は簡潔になり、支給される旅費、日当は、実際の使用金額に関わらず旅費交通費として処理できます。
また、支給された日当は職員の給与として取り扱われません。
旅費規定を作成した場合は、旅費規程に交通費、宿泊料、日当の金額を決めておくことにより、実費精算の必要がありません。このため出張者に旅費を渡し切りで済み、領収証の保管も必要ありません。
しかし、旅費の事実を証明するために精算表として出張者の氏名、日付、行先及び交通費、宿泊料、日当の金額等を記載し、出張者本人の署名押印のある精算表が必要です。
【旅費規程作成ポイント】
① 社長、役員、部課長、平社員等の役職によって、日当の金額に格差をつけること。
② 出張場所の遠近によって、日当の高低をつけること。
③ 出張者と出張目的、事実を明確にするため旅費精算書を作成する。
旅費規程の日当の金額の設定は、いくら自社の旅費規定といっても世間相場からかけ離れた高額とすると「給与」と税務署から認定されます。
日当はいくらぐらいなら認められるかは、通達にも具体的な金額は明記されていません。
基準としては、会社の規模、出張する人の役職、出張先によって異なってきますが、出張先での休憩のお茶代や昼食に要する金額が目安となります。